四谷大塚予習シリーズの学習

注意

下記の内容は旧予習シリーズについて、2005年に書いたものです。
新しいシリーズについては、ブログ賛数仙人の日記を参考にしてください。

四谷大塚とは

「四谷大塚」とは、創立50年前後になる、歴史の浅い塾業界では老舗のひとつです。
四谷大塚のシステムは、もともと「日曜教室」「日曜テスト」に参加するために、入室テストを受け、そのテスト結果に応じて、「正会員」(今のC会員の上位にあたる)・「準会員」(今のB会員中位からC会員中位くらい)になることを目指すものでした。
入室できれば、今のシステムと同じく「日曜テスト」に向けて学習する、その教科書が「予習シリーズ」です。
この「予習シリーズ」で文字通り、予習して「日曜テスト」に臨むわけです。
初期は、親の学力・教育も問われました。今とは違い、学習塾がそれほどなかった時代ですし、「親」が教えて「子供」がテストを受けるのを前提としてきました。
そこで、出てきたのが「準拠塾」です。今とは違い、公認ではありませんでしたが。
親が予習シリーズを教えるのは、限界があります。そこでそれを肩代わりする塾として「準拠塾」が登場したわけです。
蛇足ながら現「SAPIX」の分裂前のもとである「T・A・P」もはじめはその1つでした。
その後「日能研」など違う流れの塾の台頭など受け、「四谷大塚」も以下のように変化しました。

「会員制」の変革 …… ごく一部の生徒(会員)から、より広い範囲での会員制に(現A・B・C会員)
非公認準拠塾を、四谷大塚の「日曜テスト」(現YT-Net)が受けられる「公認準拠塾」・「提携塾」に


四谷大塚の「予習シリーズ」について

「予習シリーズ」は中学受験の教科書として、優れたものであることは間違いありません。
何度も改訂を重ね、入試状況にマッチしたつくりになりました。昔の難問だらけのごく一部の会員のための教材ではなく、使い方・やり方さえ工夫して間違えなければ、しっかり学力がつく教材になっています。
しかし、何でもそうですが、これだけで完璧というわけにはいけません。
優れたところと弱点は表裏一体であることは珍しくありません。
予習シリーズで学習して効果をあげるためには、そのままただこなすのではなく、シリーズをいきなりやる前にいくつかの準備をし、毎週の学習の組み立てを考える必要があります。そのままやって力がつく子はほんのひとにぎりです。
予習シリーズで学習していて、次のような疑問にあたったことはないですか?

疑問
1.しっかりやっているはずなのに成績の向上が見られない。
2.各回の成績はまあまあだが、「総合回」や「組み分けテスト」になると期待通りにならない。
3.毎週、毎週、大変な思いをして、ただこなしているだけのように思える。
4.毎週、学習する内容は、けっして自分の子供の志望校の入試傾向に合致していないように思える。
5.子供にとっては、どうもただ苦痛であるような気がする。

上記1から3は、「シリーズ」やYT-Net」で学習している家庭の、ほぼ共通の疑問であり、悩みでしょう。A・B・Cの組に関係なく、1から3の少なくとも1つは感じている方は多いと思います。
これは前述の通り、そのまま「シリーズ」を使ってしまうと、どうしてもあたる壁なのです。
4については、志望校と、今の組(A・B・C)、通われている塾などによって、状況が違いますので、一概に言えません。
ただ、志望校の入試傾向を追って学習することがよいことであるとは思えません。直接、志望校に結びつかない学習も、思考の裾野を広げるためには必要なことです。(「過去問をやる意味について」を参照)
5.についても、状況によって違いますか、一概には言えません。
しかし、何でもそうなのですが、希望を見すえて「努力」や「苦労」をすることは大事で、効果は必ず現れますが、子供がただ苦痛を覚えているだけならば学習効果はまったく期待できません。
子供であろうが大人であろうが、いやいやでやっている限り失敗や無駄が多くなりますし、効果的ではないはずです。


「予習シリーズ」との正しいつきあい方

「予習シリーズ」は、「教科書」や「参考書」として使ってはいけません。
極端な言い方をあえてすると、
「予習シリーズ」は、超トップ、下位を除いた一般的な中学入試問題のコレクション集です。
中学入試を目指すなら、こういう問題を解けるようにしておきましょう、という指針が示されているのです。
ですから、これで一から十までを学ぼうとすると、失敗します。
それがわかっている塾や先生に習えていれば、それは幸せなのですが。
もっと具体的に「予習シリーズ」の弱点を指摘し、つきあい方を考えてみましょう。

予習シリーズの弱点
弱点1.導入であるはずの例題が難しすぎる。
弱点2.カリキュラムにしたがって学習していくと共通の弱い単元ができる。
弱点3.全単元がまんべんなく決まったページ数で出てくるために、ポイントとなる問題がおさえづらい。

「弱点1」が、知らないと最大の欠点となります。
ふつう教科書や参考書での学習は「わかっているところ」から「わかっていないところ」に向け、徐々に理解できるように作ってあります。当たり前のようですが、意識せず水が流れるように理解させるのがよいとされているのです。
しかし、それをするのには、最終目標である入試問題にいたるために「紙面」も「時間」も足りません。
単純に言えば、「予習シリーズ」で、小学校の予習・復習までしていられないのです。
よって、「予習シリーズ」は「入試問題」から逆算して、理解できるギリギリのところから始めているのです。
「予習シリーズ」はいわゆる「とばし」が多くなっています。
「予習シリーズ」の例題は、「わかっているところ」から「わかっていないところ」にかかる橋はなく、ほとんどの子供達には、ただ遠くにある島に見えていることでしょう。そこまで自力で泳げる子供がそう多くいるわけがありません。
そういった意味では、本来の例題は「基本問題」にあります。また、その導入はなんと「計算と一行問題集」の一部にあったりします。
「弱点2」は、「予習シリーズ」に限らないことです。どういう学び方をしても、超人的な記憶力を持った子供でない限り、算数だけでなく、毎週毎週与えられる情報をすべて理解し、覚えてられるわけはありません。
しかし、「弱点3」とも関連しますが、あとで取りもどせばよい単元と、積み上げが必要な単元・おさえているべき単元など、忘れてしまっては先に進めない単元があるのです。
毎週の学習ではメリハリをつけ、そこを先にできるだけあつく学習し、あとで取りもどせるところは、時間が許すだけ、さらっとやるのが正解です。
ただし、これは「予習シリーズ」でも、塾の先生でも、大きな声では言えません。私も教室では言いません。
これはわからなくていい、やらなくてもいい、なんてことは、クレームのもとになりますし、できることなら全部理解して進む方がいいに決まっています。
そのおさえるべきところと流していいところがしっかりわかっている塾や先生に習えていれば、幸せです。
そうでなければ、「弱点」にはまり、上記の「疑問」にいたるわけです。

四谷大塚の算数の教材

私はただ準拠塾に属して教えている講師であり、特別、四谷大塚の販売促進に関係しているわけではありません。
しかし準拠塾に通われている方だけでなく、あまりにも四谷大塚の教材は種類が増えてよくわからなくなっている方も多いと思います。そこで私なりにご紹介したいと思います。
それにしても四谷大塚は、塾の方は他の大手塾に比べそんなに商売っ気を感じないのですが、いざ教材関係となると、どうも販売熱心のような気がします。どうでしょう? あらゆるニーズに応えた結果、こんなに増えてしまったのでしょうか。全部買っていたらやりきれないと思いますが。
予習シリーズ
四谷大塚のメイン教材で、予習シリーズ小4上・下、小5上・下、小6上・下とあります。
「上」はその学年の1学期用です。といってもご存知の通り、入試は2月にありますから塾の新学年開講は2月からが多く、「上」も2月からになります。たとえば「小4上」は小3の3学期2月からです。
「下」は2学期から3学期用です。これはもちろん首都圏入試が始まる前の1月までになります。
春・夏・冬の講習時には、四谷大塚本校舎では四谷大塚の講習の別テキストがあり、準拠塾ではそのテキストを購入して使うか、それぞれの準拠塾のオリジナルテキスト(または塾向けの教材会社のテキスト)を使うかに分かれます。

小4の予習シリーズ
今の予習シリーズのシステムに変わる前、4年が「ジュニア予習シリーズ」、5年から「予習シリーズ1」でした。もともと5年「予習シリーズ」からいきなり受験算数をやり始めるのは難しいこともあり、その準備教材として「ジュニア予習シリーズ」ができたのです。
今は「予習シリーズ4年上・下」と「ジュニア」の名はついていませんが、その発想はそれほど変わっていません。小4の学習で必要なことは、小5でいきなりびっくりしない準備であると考えられます。
ただし悪評高い「新指導要領」のおかげで、「予習シリーズ5年」への橋渡しであるとともに、小学校のお勉強から中学受験の勉強への橋渡しにもなっています。
実際、小学校のカリキュラムと中学受験の一般的なカリキュラムの遊離が上の学年になればなるほどひどくなりますから、ふつうは4年からはじめられるのが無難かと思います。
4年のシリーズでは毎週1回1単元ずつ進むことになっており、ほぼ5回に1回「総合回」という復習、まとめの回があります。

小5の予習シリーズ
改訂前は小5「予習シリーズ1」から小6「予習シリーズ3」まで毎週1回2単元ずつの学習でした。
ところが改訂後「予習シリーズ3」の単元の多くが「予習シリーズ1・2」に組み込まれ、「予習シリーズ5年上・下」になりました。
毎週2単元ずつ進むのはこの「予習シリーズ5年」だけです。
「比」や「相似形」など改訂前は小6の1学期(予習シリーズ3)でやっていた単元を前倒しにしています。
単純に言えば、1年半かけてやっていた内容を小5の1年間に圧縮しています。改訂前は小6の1学期までで中学入試算数の基本・重要単元を終わらせていましたが、改訂後の今は、小5の3学期(予習シリーズ5年下)まででほぼ全単元終了になっています。
それが良いか悪いかはご判断に任せますが、そうなっている以上、これにうまく乗っていくのがプロの塾、塾講師かと私は思っています。
その昔、日能研は「殺人カリキュラム」と言われることもあったかと思いますが(私が言ったのではありません。あくまでも聞いたことがあるだけです。日能研関係の方、お気に障ったら失礼をお詫びします)、その影響があるのかないのか。昔は多少小学校のカリキュラムを意識して作ってあったかも知れませんが、今は無視せざるを得ない状況になり、かえって気にせずに作った結果なのかもしれません。
ただ言えることは、改訂前以上に使う側(講師)の技量が問われる内容になっています。いかに上手に使っていくことができるかが勝負の分かれ目になるでしょう。
個人的にはだましだまし必要に応じて先の内容を教えていた私にとっては、あ、この回は詰め込みすぎだなあと感じる回はありますが、だましだましでなく比など教えられるようになっていますから、これはこれでいいのではと思います。

小6の予習シリーズ
「小6上」は、小5でほぼ全単元を終え、四谷大塚提唱のスパイラル(らせん)カリキュラムにのっとり関連単元ごとの総合学習のようになっています。
たとえば、「つるかめ算」、「差集め算」といったくくりではなく、「和と差の文章題」という大きなくくりで復習と、積み残したいくつかの新単元を学習する内容になっています。
毎週見かけ上は1単元ですが、小5に比べて楽になるわけではなく、1単元ごととはいえ内容は盛り沢山です。小5に比べ、より入試問題に近い問題になっています。
「小6下」は「上」をさらに総合化したものになっています。スパイラルの完成を目指して作られたものでしょう。

計算と一行問題集
「小4上」から「小6下」まで、予習シリーズにあわせてあります。
「YTネット」に参加している場合は、ここから計算問題が出ますから必携です。
文字通り計算と一行小問集です。ほぼ毎日10数題の計算と一行問題を学習できるようになっています。
内容は、シリーズのその回にそった計算と基本問題、さらに前の単元の基本の復習です。
昔の「すきっぷ」のかわりに登場したものです。
改訂前に、私が思っていた四谷大塚の弱点の1つである「計算力が身につかない」という問題はこれで解消されています。
私からすると今度はちょっと量が多すぎるかなと思います。しかし文部科学省の新「指導要領」施行あたりをピークに、子どもの理系離れ、計算力不足など基礎学習能力が叫ばれていて、実際、現場でもそれは大いに感じますから、学校でそれほど計算をやらないのだとすれば、これくらいの方がちょうどよいのかもしれません。

演習問題集
「小4上」から「小6上」まで、予習シリーズにあわせてあります。
予習シリーズの問題のほとんど数字がえ問題集です。個人的には「そこまで売っちゃう?」と思ってしまいます。良い問題を繰り返し解くということには理にかなってはいますが、それならばシリーズに組み込むとか、ただでつけるとかできないのでしょうか。
まあ、ただでさえ安くないシリーズの値段が上がってしまっては困りますが。
塾の方でそれほどプリントなど別教材が配られないのなら持っていても良いかもしれません。

応用問題集
「小5上」から「小6上」まで、予習シリーズにあわせてあります。
改訂前の「アルファ」にあたるものです。「アルファ」との違いは、もちろんカリキュラムも違いますが、例題・解説がなくなったことです(もちろんそれぞれの問題の解説解答はついています)。
「アルファ」は予習シリーズの上級編といった感じでしたが、この「応用問題集」は「予習シリーズ」に載せていない応用問題を載せたものという感じです。
「YTネット」でC会員ならば、「YTネット」の算数のテストはここからも最後の問題あたりに出ますから必携となります。C会員以外ならば、よっぽど算数が得意で時間の余裕がない限りは買う必要はないでしょう。

総合問題集
小6の2学期用です。全28回の総合模擬テストです。たぶん昔の「合不合テスト」などを編集し直したものではないでしょうか(間違っていたらごめんなさい)。
私の場合、小6の2学期以降は自分のオリジナルプリントやテキストを主に使うので、これは使ったことがありません。使ってみないと良さなどわかりませんから、紹介はこの程度で終わらせます。
どなたか使った方がいらっしゃれば、感想などお聞かせいただけると幸いです。

実力完成問題集
小6の2学期用です。ある程度以上の学校を受けるのなら、これはお勧めできる問題集です。
単純に四谷の合不合判定テストで、偏差値50前後の学校を狙うのならば「四科のまとめ」、それ以上(偏差値60前後以上)の学校ならば「実力完成問題集」でしょうか。
ただしこれも通われている塾などの状況しだいです。使う余裕があるのかどうかで決まります。またこれだけというわけにはいきません。量的にはそれほど問題数は多くありませんから。
直前の最後の仕上げに集中してやるのに向いていそうです。

四科のまとめ
小6の2学期用です。今年(2005年)改訂されました。時代の流れか、改訂されるたびに易しくなっています。
典型問題、パターン問題はほぼ抑えられていますから、上に書いた通り、偏差値50前後の学校を狙うのにはちょうど良いと思います。また、算数が不得意など基本学習の必要がある方にも効果的でしょう。
基礎作りをしたければ、小6下の「計算と一行問題」か「四科のまとめ」か、どちらを集中してやるとよさそうです。

エリート
小6の2学期用です。これはシリーズの改訂前どころではなく昔からある超上位(御三家レベル以上)向けの問題集です。
この頃新しいものは見ていませんが、改訂したといううわさは聞きませんからたぶん昔のままでしょう。私のまわりだけかもしれませんが、昔は子どもにとって「エリート」をやるのはステータスでした。
ある一定以上を目指すのなら良い問題も多いかと思いますが、問題としてはかなり古いです。
入試問題にも多少流行がありますので、やはりこれだけというわけにはいきません。
しかし流行はくり返しますし、良い問題は生き残りますから、入試にまったくでない問題集というわけではありません。

この項は以上です。


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アンケートから

この記事は「非常に参考になった」
「予習シリーズで学習をはじめたところ 「例題」からほとんど解けない状態で、基礎からできていなかったのかと、がっかりしていましたが、四谷の教材についての説明を読んで安心しました。

の記事は「おもしろかった」
毎週ではありませんが、我が家ではいまだにアルファを使っていますよ。
講師の指導方針で『予習はするな。』という前提ですので、予習シリーズも応用問題集も授業でのぶっつけ本番です。(とは言うものの、予習をしてこない子供の方が少ないようですが。)
週の初めにシリーズを終えるとやっとですが、アルファも8割がたはこなせるようです。自宅でアルファを終えた週は、応用問題集の回の授業は楽々・・・だそうです。
全て比較したわけではないのでなんとも言えないのですが、半分近くは昔のアルファのままの問題ではないでしょうか。ともかく、アルファには重宝しています。


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